考察

「のび太くん」が勉強も、スポーツもできない心理学的理由!問題は『ほめ方』だった~「優秀」というレッテルの落とし穴~

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(http://dora-world.com/characters/nobitaより)

誰もが知っている『のび太くん』

漫画『ドラえもん』に登場する主人公『野比のび太』は、誰もが知っている「劣等生」(言葉は悪いです、すみません)の代表のような存在です。これまで、「どうして『のび太くん』は勉強も、スポーツもできないのだろう」なんて考えたこともありませんでした。だから、「単純に、色んなことができない男の子」がいて、だからこそ「ドラえもん」が助けに来てくれたのだと思っていたのです。

しかし、よくよく考えて見ると、『のび太くん』ができないのは基本的に「勉強」と「スポーツ」であり、実は「射撃」が得意だったり、「楽器」を演奏できたりもするのです。

つまり、『のび太くん』は「単純にできないやつ」ではないのです。できないのは、「勉強」と「スポーツ」がメイン。だから、学校ではうまくいかないけれど、映画版とかで『外の世界』に出たりすると活躍できるのです。

この『のび太くん』が勉強もスポーツもできないことの原因となるものを、心理学の『ほめ方』についての研究にみたので、まとめていきます。

 

『ほめ方』の研究

『マインドセット「やればできる!」の研究』の著者、キャロル・S・ドゥエックは『ほめ方』について研究するために、思春期初期の子供たち数百人を対象に以下のような実験を行いました。

【方法】

まず、生徒全員に、非言語式知能検査(知能テスト)のかなり難しい問題を解かせました。

そして、テストが終わった後でほめ言葉をかけるのです。ほとんどの生徒がまずまずの成績でした。

ほめるにあたっては、生徒を2つのグループにわけ、一方のグループでは、その子の【能力】をほめました

まあ、8問正解!よくできたね!君は頭がいいんだね!」というような具合です。この言葉によって、この子は『有能』というレッテルを貼られた、ということになるわけです。

対して、もう一方のグループでは、その子の【努力】をほめました

まあ、8問正解!よくできたね!頑張ったんだね!」という具合です。つまり、自分に何か優れた才能があると思わせないように、問題を解く努力をしたということだけをほめるようにしたのです。

このとき、グループわけをした時点では、両グループの成績はまったく同じでした。

しかし、『ほめる』という行為のあと、両グループのあいだに驚くべき差が生じてくるのです。

【結果】

1.行動への影響

【能力】をほめられたグループでは、次に取り組む問題を選ばせると、新しい問題にチャレンジしようしませんでした。つまり、ボロを出して『有能』ということを疑われるようなことをやりたがらなくなったのです。

さらに、全員になかなか解けない問題を出題すると、「自分はちっとも頭がよくない」と考えるようになりました。

また、「問題を解くことは楽しいか」という質問に対して、「解けたときは楽しいが、難しい問題を出されたときは面白くない」と答えました。

一方、【努力】をほめられたグループでは、次に取り組む問題を選ばせると、9割が新しい問題にチャレンジしました。つまり、自分が新しいことに挑戦し、学べるチャンスを見逃さなかったというわけなのです。

そして、なかなか解けない問題が出題されたときには、なかなか解けないのだから、「もっと頑張らなくちゃ」と考えました。このとき、自分の頭が悪いから解けないとは考えなかったということも重要です。さらには、解けないことを失敗であるとも思わなかったのです。

「問題を解くことは楽しいか」という質問に対しては、「解けたときは楽しい。簡単な問題よりもむしろ、難しい問題のほうが面白い」と答える子供が多かったのです。

 

2.成績への影響

さらに深刻なのは、成績への影響です。

【能力】をほめられた生徒の成績は、難問を出題されてからガクンと落ち、その後ふたたびやさしい問題が出されても回復しませんでした。つまり、自分の能力に自信が持てなくなり、スタートのときよりもさらに成績が下がってしまったというわけです。

対して、【努力】をほめられた生徒の成績は、どんどん良くなっていきました。難問に挑戦したことでスキルが磨かれ、その後ふたたびやさしい問題が出題されたときにスラスラ解けるようになっていたのです。

すなわち、【能力】をほめると生徒の知能が下がり、【努力】をほめると生徒の知能が上がったということなのです。

つまり、子供に「あなたは頭が良い」と言ってしまうと、その子は自分を賢く見せようとして、愚かなふるまいに出るようになってしまうというわけなのです。

 

なぜ、『のび太くん』は勉強もスポーツもできないか

いよいよ本題です。なぜ、『のび太くん』は勉強もスポーツもできないのか。いや、なぜ、「勉強」と「スポーツ」ができないのか。

その答えは、てんとう虫コミックス第2巻「ぼくの生まれた日」のなかにありました。

この話では、のび太くんが勉強しないことをお母さんとお父さんにこっぴどく叱られてしまうところから始まります。両親から叱られたことに、ひどくショックを受けた『のび太くん』は、「ぼくはこの家のほんとの子じゃないんだ。」と考え、本当にこの家で生まれたかどうかを確かめるために、ドラえもんといっしょにタイムマシンで自分の生まれた日(昭和39年8月7日)に戻ることにします。

そこで、10年前のお母さんとお父さんに出会い、自分が生まれたときには、自分がいかに両親から期待されていたかということを目の当たりにし、その日の夜、勉強を頑張るというところで物語は終わっています。

さて、問題は両親の病院での発言のなかにありました。お父さんが『のび太』という名前を自慢げに提案し、その後、お母さんとお父さんは『のび太』の輝かしい将来を空想します。以下が、その場面です。

父「きみににたら、成績ゆうしゅううたがいなし!

母「あなたににたら、運動ならなんでもこいのスポーツマン。

そう、これこそが、能力は遺伝し、そして固定的なものであるという発言ではないでしょうか。

だから、きっと『のび太くん』は何かをするたびに、【能力】をほめられていたのではないかと考えられるのです。

また、【能力】をほめられることの一端を示しているのが、次のシーンです。

 

このシーンは、『のび太くん』未来から来たドラえもんに初めて出会い、「ジャイアンの妹のジャイ子と結婚する」という未来になると言われたとき、あまりのショックでドラもんを机の引き出しに追い返すというシーンです。

注目すべきは、左下のお父さんの言葉です。

父「しかしたいした空想力だ。」

そうです。この発言は【能力】をほめる以外なんの発言でもないのです。

普通、ほうきで机を叩いて、泣きながら「未来から来たというドラえもんなる存在」のことを訴えてきたら、むしろ心配するのではないでしょうか。

そんな通常は心配するようなことでさえ、ほめるべき【能力】としてほめているのだから、きっと『のび太くん』は【能力】をいっぱいほめられて育ったはずです。

とりわけ、両親から遺伝したはずの「勉強」と「スポーツ」の【能力】については、その傾向が強かったのではないかと思うのです。

結果として、【能力】をほめられるほどにはできない自分を認識してしまい、だんだんと自信をなくして、できなくなってしまったのではないだろうかと考えられます。

 

まとめ

以上見てきたように、【能力】をほめられると、そのレッテルに応えようとするあまり、自分を向上させるという観点からみれば愚かな行動に出てしまうということです。

おそらく、『のび太くん』まではいかなくても、同じように自分にどこか限界を作ってしまっている人も実は多いのではないでしょうか。

しかし、これこそが「硬直マインドセット」による世界の認識であり、自分の成長のためにはこれを「しなやか」にすることが求められるのです。

逆に言えば、『のび太くん』が現状を脱出するには、「ドラえもん」は必要ない。それは「心」の問題だから、ということになりそうです。

 

<参考文献>

ドラえもん (2) (てんとう虫コミックス)
Posted with Amakuri at 2017.8.29
藤子・F・不二雄
小学館
ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)
Posted with Amakuri at 2017.8.29
藤子・F・不二雄
小学館
マインドセット「やればできる! 」の研究
Posted with Amakuri at 2017.8.29
キャロル・S・ドゥエック
草思社

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