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自分の思い通りになることは幸福か?運命をコントロールすることと幸福感の関係

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運命をコントロールする

 



 

「運命を決めるものはなにか」を考える

運命を決めるものとは一体なんでしょうか。自分の行動なのでしょうか?それとも、完全に自分でコントロールできる範疇を超えた外部の力なのでしょうか?どのように考えているかは人によって随分と異なるところだと思います。

この「運命をコントロールできる」ということについての感覚は、性格の一部であるとも言えるくらい安定しているものでありますが、経験によっては変化する場合もあるそうです。

そして、多くの研究では「運命は自分でコントロールできる」と考えているほうが、幸福度や成功に大きくプラスにはたらくことが示されています。

「コントロールできる」という感覚によって、不幸になった老人たち

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「自分の人生を自分でコントロールしているという感覚が、心身の健康を促進する」ということは、現在の心理学では、十分な確証が得られています。

かつて、これをテーマにした研究は「老年学」という分野で、老人ホームの入居者を対象にして、日常のコントロール感と幸福についてたくさん行われていました。「介護施設に入居すると、自由とコントロールを失ってしまう」という問題に対処するためです。

エレン・ランガーとジュディス・ロデインの研究

1976年のエレン・ランガーとロデインの研究では、コントロールのレベルのわずかな変化で入居者に大きなメリットがあるということが示されました。

わずかな変化とはとても簡単なことで、例えば、入居者に今日見る映画を選んでもらったり、部屋の装飾をしてもらったり、植物の世話をしてもらったりするということです。

たったこれだけのことですが、これらのことを施設のスタッフが勝手に決めてしまった入居者たちに比べて、より活動的になり、幸福感を高め、健康度が増して長生きできたとされています。

リチャード・シュルツらの研究

一方、同じ時期に行われたリチャード・シュルツらの研究では、少し違った結果が示されました。

この研究では、ある老人施設の入居者を対象に、大学生を定期的に訪問させて交流させるというものです。

まず入居者たちは、一方は「学生の訪問日時が入居者によって決められるグループ」、もう一方は「学生の訪問日時が勝手に決められるグループ」という2つのグループに分けられました。ただし、学生が施設に滞在する「時間」や交流の「内容」は両方のグループでまったく同じとされました。すなわち、「学生の訪問」という「運命」を“コントロールできる”グループと“コントロールできない”グループにわけたというわけなのです。

そして、ここまで見てきた通り、「コントロールできる」という感覚があることで幸福感は上昇するのです。そのため、「学生の訪問日時が入居者によって決められるグループ」のほうが主観的幸福度、健康について、もう一方の「学生の訪問日時が勝手に決められるグループ」よりも高まりました。これは、ほかの研究と比較しても特に新しい発見ではありません。

しかし、今までの研究と異なるのはここからです。

この“コントロールできる”という感覚ですが、現実には学生の卒業に伴い、施設への訪問は唐突に終了してしまい、突如として入居者たちから失われてしまったのです。

すると、これまで「学生の訪問日時が勝手に決められるグループ」よりも、幸福感も健康も高かったはずなのに、著しい低下がみられ、「学生の訪問日時が勝手に決められるグループ」よりも健康や幸福感が低くなり、さらには死亡率も高まってしまったというのです。

コントロール感が失われてしまうということはそれだけショックが大きいというわけです。

まとめ

この「運命をコントロールできる/できない」という考え方ですが、実は仏教においても同じような考え方があります。

それは、人間が善悪の業因によって行きめぐる(迷う)六つの道(六道)のひとつの『天道』というものです。『天道』というのは、「天」が入っていますがいいものではなくあくまで「迷う道」なのです。

『天道』では、望んだことがすべて思い通りになります。それだけならいいのですが、現世で思い通りになったところで、いずれは「死」という現実によって全てが失われてしまいます。これが「迷う」ということです。

「運命をコントロールしているという感覚が奪われる」ということも、なんだかこれに似ているような気がします。多分、本質は同じではないかと思うのです。

私たちは、ともすれば自分の思い通りにならないことを悔やんでしまいますが、必ずしもそれが幸せではない、ということを知れば、よりよい生き方を考えることができるのではないでしょうか。

<参考文献>

自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義
Posted with Amakuri at 2017.8.16
ブライアン・R・リトル
大和書房

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